2021/02/16
ライブの開催ができない状況でステイホームの時間にギターのリペアをしていました。
ライブネタがないので、YAMAHA FG-152のリペアネタをアップします。
友達にもらったこのギターですが、ネックが弓なりに曲がっている上にネックの元起きで弦高が高くて弾けない状態で1年近く放置していました。
重い腰を上げてネックのリセットをしたのを前回簡単に紹介しました。
前回のおさらい
まずは指板とボディ部を剥がして15フレットにスチーム用の穴を開けます。
ボディはキッチン用のアルミ箔テープで養生します。ココ重要で高温スチームで塗装が白くなったりします。
養生テープではスチームで剥がれてきます。
この圧力釜でネックポストにスチームを入れ接着剤を剥がします。
古いFG-130はわりと簡単に外れたのですが、FG-152は年代が新しいので接着剤が変わった為か固くて外れません。
ウレタン塗装がネックヒールとボディサイドがカチカチに厚塗りされていて高温スチームが全然効きません。
彫刻刀で塗装を剥がしやっと外れました。
ネックポストに高温スチームを長時間あてたためボディにダメージを受けてネック近くのトップとサイド、バックが少し剥がれてしまいました。
ボディの修理しています。
弓なりに曲がったネックの指板を1フレットから5フレットぐらいの所を削り指板を真っ直ぐな状態にしてからセット角を付けて接着します。
指板のスチーム用の穴を塞ぎ、黒く着色されているので、削った所を水性ステインで着色します。
ここまでは前回の状況でした。
後はフレット交換、TUSQでナットとサドルを新しく作り完成の予定でした。
ネックのセット角もバッチリ決まり、チューニングしていくと張力でバックがネック元で剥がれてネックが起きてきます。
思いの外スチームのダメージが大きかったようでバック板が肩の所あたりから剥がれています。
ネックの張力にも耐えるように念入りにタイトボンドを使い接着しました。
ボディが完成したので手間のかかるフレットの交換。TUSQでナット、サドルを作り、弦高調整していきます。
弾き語りではハイポジションは使わないしハードに弾くので弦高は高めの3mmぐらいに調整していますが、
ソロインスト曲を弾くとハイポジションも使うし難しい運指などあるので6弦2.5mm、1弦2.1mmぐらいに調整しました。
何箇所かフレットでビビリがあったのですり合わせ調整。
修理跡や打痕箇所をウレタン塗装でタッチアップ。全体をクリーニングして仕上がり。
(右) FG-130 グリーンラベル
72年〜74年製造
トップ:スプルース合板
サイド・バック:サペリ合板
ネック:ナトー
フィンガーボード・ブリッジ:ローズウッド
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(左) FG-152 オレンジラベル
75年11月〜78年12月製造
トップ:エゾ松合板
サイド・バック:アフリカンマホガニー合板
ネック:ナトー
フィンガーボード・ブリッジ:パリサンドル
どちらもシリアルナンバーが消えていてわからないので正確な製造年はわかりません。
バックはFG-152のアフリカンマホガニーと、FG-130のサペリの縞模様が綺麗です。
FG-152のヘッド周りです。ロッドカバーが付いていませんでした。
この機種のロッドカバーは木でできているので外されているのが多いです。
白とスモークの硬質塩ビ板を張り合わせて制作しました。
FG-130のヘッド周りです。こちらはオリジナルパーツです。
若い頃このバルタンヘッド(バルタン星人のようなヘッドの形)と音叉マークの付いたフォークタイプのギターを持っていました。
型番は記憶にないのですが、懐かしくて手に入れました。
初めてネックリセットをしたFG-130のサドルですが、セット角の調整が難しくもう少し角度をつければよかったかな。
2回目のネックリセットのFG-152のサドルです。ちょうどいい感じのセット角ではないかと思います。
スプルーストップとエゾ松トップの違いいかがですか。ブリッジの形はこちらが好きです。
FG-152のネック部分です。
こちらはFG-130のネック部分です。
FG-130のヘッド裏。ペグもオリジナルです。
こちらはFG-152のヘッド裏です。
ペグが2個ぐらいガタがありましたがチューニングするとガタつかないのでグリスアップしてオリジナルのままです。
FG-152のオレンジラベルです。
FG-130のグリーンラベルの前期です。
グリーンラベルには前期と後期の物があります。ラベル下部に住所が入った物が前期で後期はMADE IN JAPANになっています。
この2台のギター、ボディ形状や材質がよく似ていますが全然別のギターです。
FG-180J黒ラベルも持っていますが、この後オレンジラベルに変わります。
この時期、音の方向性がシャリーンとした今風のヤマハの洗練された音になったように思います。
作りも大きく変わっているようでFG−130は軽く1.5kgなのに、FG-152は2.0kgあります。
古いヘルスメーターで計ったので正確ではありませんが持った時の重さが全然違います。
分解していないのでわかりませんが、トラスロッドが頑丈な物になったのではないかと思います。
オレンジラベル以前のFGは馬鹿鳴りと言われるように豪快に鳴ります。
オレンジラベル以降は洗練されてバランスの良いまとまった音のように思います。
FG-130は倍音がよく出ていて音量もあり良く鳴っています。
でも、FG-152も好きですね。
コードストロークではまとまっていて、フィンガーピッキングでは低音から高音までバランスが良いので弾いていて気持ちが良いです。
オレンジラベル以降で評価が分かれますが、私は進化した結果だと思います。
フォークタイプのスモールボディ、634mmのショートスケールなど抱えた時にとても弾きやすいです(日本人の体型に合わせてある)。
ネック形状もFG-130より細いので、フィンガーピッカーにはもってこいのギターです。
ただこのFGですが、ネックの元起が多いのが欠点です。ネックのセット角が付いていない(トップと平行にネックが付いている)。
ネックが太い、トラスロッドがあまり効かないしねじれたりする、など問題も多いと感じます。
入門機種でヤマハの音を語るなと言われそうですが、YouTubeなどでよく見かける比較動画など作ってみようかな。
こんなリペアネタ好きな人もいるかと思います。
コロナ自粛の時期なので手持ちのギターのセッティングしています。4mmぐらいになった物もありコツコツ調整しています。
このセッティング次第で音がずいぶん違ってきます。
今は12弦に付いていたプラスチックのナットがかけたのでTUSQで制作しています。